日本から直行便のない街へ向かうとき、旅は少し特別なものになります。
マレーシアの首都・クアラルンプールを経由し、国内線を乗り継いでボルネオ島へ。
約1時間40分の空の旅は、ほどよい疲労感とともに「遠くまで来た」という実感がありました。


空港を出た瞬間、街の空気がクアラルンプールよりも湿っていることに気がつきます。
サラワク州(Sarawak)はボルネオ島北西部に位置し、マレーシア13州の中で最も広い面積を誇ります。そして総面積の約67%が熱帯雨林に覆われている緑豊かな場所。今回の旅の目的地は、ボルネオ島最大の都市であるサラワク州都・クチンです。

訪れたのは雨季にあたる1月半ば。東南アジアと聞いて思い浮かべる喧騒や都会的な熱量とは少し違う、のんびりとした時間がクチンにはあります。
クチンという名前はマレー語で「猫」を意味します。街の中心には観光客のフォトスポットにもなっている巨大な猫のオブジェが置かれていますが、実際の野良猫にはそれほど出会いませんでした。その小さな拍子抜けも、旅の記憶の一部です。

小さな飲食店や雑貨店が所狭しと並ぶ繁華街や、グローバルに展開するホテルも揃い、都市としての機能は十分なのに、なぜかクチンの街は驚くほど落ち着いています。

街の中心を流れるサラワク川と市街地の距離感も印象的。
観光のために整えられた景観というより、昔からそこにある生活の風景のよう。今回はゆっくり川辺を歩く時間が取れなかったことが、少しだけ心残りです。

クチン中心部を流れるサラワク川。川沿いは約900mにわたって遊歩道になっていて、夜はライトアップもされています。傘型の屋根が特徴的なサラワク州議会議事堂などを眺めながらのんびりと散歩するのもいいでしょう。
夜になると街は早く静まり、人通りが減っていきますが、ミュージックバーには人が集まっていたりと、地元の人たちがゆったりと夜を楽しんでいました。

日中は、サラワク川周辺のメインバザール通りを歩くのがおすすめです。地元の民芸品や雑貨や衣料品を扱う小さな店が軒を連ねる通りは風情があり、じっくり見て歩けば1時間はかかるでしょう。屋根があるので突然のスコールでも安心です。

クチンには高級ホテルからリーズナブルなホテルまで目的別に選ぶことができます。今回の旅では、2026年夏に完全リニューアルする予定のホテル「プルマン・クチン」に宿泊しました。ベージュや明るいニュートラルカラーを使った、ナチュラルなインテリアのロビーフロアは20256年1月現在は既に完成されていて、2026年2月にはプールも完全リニューアルする予定です。



客室も順次改装されているそうでとても洗練された内装でした。
ボルネオ島と聞くと、秘境やジャングルを想像する人も多いかもしれません。けれどクチンでは「島に来た」という隔絶感はほとんどありません。都市の快適さと自然の近さが共存しています。
観光地として磨き上げられすぎていないこと。
それが、この街のいちばんの魅力なのかもしれません。
帰国してからふとした瞬間に思い出す。そんな静かな余韻を残す場所です。