発信

ボルネオを知るということ。
サラワク文化村で出会った、今も生きている文化

クチンの街が穏やかな理由を知りたいと思いました。
なぜこの土地は、こんなにも静かなのだろう、と。

その答えを探すように訪れたのが、サラワク文化村でした。

クチン市街から車で約1時間。
マレーシア・ボルネオ島サラワク州には27の民族が暮らしており、その代表的な7民族の伝統家屋を復元したテーマパークがここです。

といっても、いわゆる観光用のテーマパークとは少し違います。

広大な敷地の中に、イバン族のロングハウスをはじめ、民族ごとに建築様式の異なる家屋が並びます。家の中では実際に民族の人々が常駐し、楽器を奏で、伝統菓子を作り、来訪者に吹き矢体験をさせてくれます。

展示を見る、というより、生活の中に足を踏み入れる感覚でした。

イバン族の住居では、燻された実物の頭蓋骨が吊るされています。
かつて首狩りの風習を持っていた歴史を、言葉ではなく空間で伝えています。

一瞬、息をのみます。
けれどそこにあるのは恐怖ではなく、文化の時間の重みでした。

そして、この文化村で最も印象に残ったのが、1日2回行われる伝統舞踊ショーです。

正直に言えば、「民族ショー」という言葉に、どこか観光向けの演出を想像していました。ところが舞台が始まった瞬間、その先入観は消えました。

約1時間弱のショーは、本格的なミュージカルのような構成でした。
衣装や小物は実際の民藝を用い、ダンサーたちの踊りや演技のレベルも高い。

物語性があり、笑いがあり、緊張感があり、次の展開にワクワクしながら見入ってしまいます。
飽きる瞬間がなく、気づけばあっという間の1時間でした。

そして終盤、観客がステージに招かれます。

私も思い切って舞台に上がり、伝統ダンスに参加しました。
ぎこちない動きでも、周囲のダンサーが自然に受け入れてくれます。

文化は、ガラスケースの中に保存されるものではない。
一緒に踊ることで、少しだけその輪の中に入れてもらえた気がしました。

サラワク文化村で体験した時間は、観光というより“理解”に近いものでした。

その後に訪れたのが、クチン中心部にあるBorneo Cultures Museumです。

2020年にリニューアルされた近代的な建物の中では、ボルネオ島(カリマンタン島)の歴史と文化が体系的に紹介されています。プロジェクションマッピングや3D展示なども取り入れられ、視覚的にも分かりやすい構成です。

文化村で見た住居や民族の暮らしが、博物館では歴史の文脈の中で整理されていきます。
実際の頭蓋骨も展示されており、文化村で感じた衝撃が、ここで静かに理解へと変わっていきました。

クチンは派手な都市ではありません。

けれど、その静かな街の奥には、多民族国家マレーシアの厚みが確かにあります。

サラワク文化村で体験し、博物館で理解する。
その順番で巡ることで、この土地の時間がゆっくりと腑に落ちました。

ボルネオを知るということは、異文化を遠くから眺めることではなく、その背景にある時間に触れることなのかもしれません。

クチンを訪れるなら、ここは外せない場所です。
半日かけてじっくり巡る価値があります。

文化に触れたあと、街の空気は少し違って見えました。